「一生お金に困らない人生を送りたい!」誰しもそう思うでしょう。
そのために何が必要なのか?
テレビや雑誌でいろんな人がいろんなことを行っているけれど正解がわからない!という方々のために、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝が本当に必要なことを「iDeCoで自分年金」として全8回連載でお届けします。
講師:井戸美枝
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、社会保険労務士。経済エッセイスト。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。確定拠出年金の運用に関する専門委員会委員。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題について解説している。
第1回「お金に困らない!老後資金を作る5つの方法」
老後のお金に不安を感じている方は、一生お金に困らない人生を送るために知っておきたい「基本」を知らないだけかもしれません。
現状とやるべきことを把握して、老後の不安から自由になりましょう。まずは現状を知るために、「老後が不安」度をチェックしてみてください。
上記画像の10項目で、いくつ当てはまるか数えてみてください。
みなさんはどのくらい当てはまったでしょうか?〇が多いほど不安度が大きい人になります。
○が7つ以上の方は不安度 大!
毎月の手取り収入と支出額の把握が不十分で貯蓄をしていても赤字補填のために取り崩してしまうこともあるのでは?まずは手取り月収を知り、1ヶ月にいくら使い、いくら貯めるのかのプランを立て、それを守ることから始めましょう。
ローンがある方は返済を最優先に!
○が4~6つ以上の方は不安度 中!
毎月、貯蓄や積立投資はしているものの、収入・支出のバランスが適正か、一度見直してみましょう。さらに、老後資金作りに最もお得な制度を使いこなしているかなど、利用している制度についてもチェックの必要があります。将来の年金の見直しも把握しておきましょう。
○が3つ以下の方は不安度 小!
自分の収入・支出をきちんとコントロールできていて、着実にお金をためています。基本的な年金の知識もあり、老後の不安は少ないはず。将来のライフプランを立て、それに沿って自己投資をし、選択肢を増やすことで、さらに老後の不安は減りそうです。
老後のお金の不安から自由になるための基本4つ
現状を把握できたところで、老後のお金の不安から自由になるための4つの基本をおさらいしましょう。
①月々のお金の出入りの把握
手取りを知り、家計簿をつけて支出を把握しましょう。
これらを把握していない場合、病気や失業など、人生のピンチで困ったことになりかねません。
②住宅や奨学金以外のローン返済は0に
どんなに一生懸命貯めても借金があっては本末転倒ですよ!
③ライフスタイル別の理想の貯蓄率の実現
ライフスタイルから理想の貯蓄率を考えることからはじめましょう。
④年金の見込み額を知ること
毎年自分の誕生月に「ねんきん定期便」が送られてくるのでチェックしましょう。
これらの4点をしっかりチェック、対応することで老後のお金の不安から少しは自由になれるはずです。
老後資金を作る5つの方法
100歳までの人生、年金だけでは足りない分の目安は以下の表のようになっています。
シングルなら約1,600万円、夫婦2人世帯だと約1,700万円です。
退職金が出る場合は大きな助けになりますが、それ以外の場合は足りない部分を自分で補う「じぶん年金づくり」が必要です。
老後の備えを作る主な方法を5つご紹介しましょう。
① iDeCo
老後の安心と税金メリットを得られる一石二鳥の制度
iDeCoの積立て対象は貯蓄・保険・投資信託。掛金全額が所得控除の対象で、利息や運用益が非課税で税金メリットが大きいのが特長です。
なお、引き出しは60歳以降。掛金上限額は働き方によって異なり、その範囲内で金額の変更が1年に1回可能で、積立ての中止もできます。
② つみたてNISA
運用益を非課税にして、長期的な資産形成を
つみたてNISAは少額からの長期・積立て・分散投資を支援するための非課税制度です。投資限度額は毎年40万円で、非課税期間は最長20年。積立て対象は金融庁が厳選した投資信託のみで預金や保険は対象外です。
いつでも引き出せるので老後資金以外にも使えることが特長です。
③ 企業年金
勤務先に制度があればiDeCoと併用可能か確認を!
企業年金は、企業が掛金を出し、退職後に年金として支給する制度です。支給額が決定している確定給付型と運用次第で変わる確定拠出型の2つあります。
制度によってiDeCoと併用できない場合もあるので、会社員の場合は人事・総務に確認をしましょう。
④ 貯蓄
好きな時に何にでも使える。老後の備えの基本
公的年金と並んで、老後資金の柱となります。老後の備えの基本中の基本になりますので、計画的に貯蓄しましょう。
⑤ 個人年金保険
老後のお金の確保はできるが超低金利時代には不向き
毎月保険料を支払い、60歳以降に年金を受け取る保険商品です。保険料と所得に応じた税制メリットはあるものの、非課税枠は小さく、低金利時代の現代にはあまりおすすめできません。
老後資金準備に「正解」はなし!
5つの方法を見てどれが正解なの?思う方もいらっしゃるでしょうが、残念ながら老後資金の準備に「一つの正解」はありません。
ただ言えるのは、「貯蓄だけ」ではなく、複数組み合わせてコツコツ準備することがベストです。
おすすめは貯蓄に加え税金が減る優遇策があるiDeCo&つみたてNISAの組み合わせです。
積立投資と投資信託って?
iDeCoやつみたてNISAは積立投資のできる制度です。「積立投資」とは毎月投資信託を一定額ずつ積立てていく投資方法のこと。
「投資信託」とは投資家から集めた資金をまとめて、投資の専門家である運用会社が国内外の株式や債券などに分散投資を行い、その運用成果をお客さまに分配する「金融商品」のことです。
積立投資がおすすめな3つの理由
老後のお金を作る方法として積立投資がおすすめな理由は3つあります。それぞれご説明しましょう。
① 投資対象を分散することでリスクを抑えられる
上のグラフをご覧ください。
Aは国内・海外の株・債券に1/6ずつ投資した場合です。20年間の年平均は4.0%のリターン。
Bは国内の株・債券に半分ずつ投資した場合、年平均では1.9%。
Cは定期預金のみの場合、年平均ではわずか0.1%。
投資信託なら、株や債券など複数の資産に投資できるので、リスクの分散ができます。世界中に幅広く投資先を分散すれば、資産全体の価格変動を軽減できる可能性が高いのです。
② 長期間続けるほど元本割れしにくくなる
上のグラフは保有期間5年と20年を比較したものです。
5年の場合は、8%利益が出るときもありますが、元本割れもしています。しかし、20年では元本割れはありません。
分散した投資を長期間続けることで、結果的に元本割れの恐れが小さくなる傾向にあります。
短期間で積立てをやめてしまうと、効果は弱まるため、値動きに一喜一憂せず、長期間にわたり続けることが大切です。
③ 定額の積立てなら安い時に多く購入できる
上の表で、緑の欄の値動きの場合に、投資信託を最初に4万円買った時と4か月間、毎月1万円ずつ買った時を比べてみましょう。
最初に4万円分購入した場合は購入口数は4万口、平均購入単価1万円です。
続いて毎月1万円ずつ購入した場合は、購入口数は4.5万口、平均購入単価は約9,000円になりました。
一定期間ごとに定額で商品を購入する定額積立てなら、価格が高い時は少なく、安い時に多く買うことになり、結果的に平均の買い付け価格を下げることができます。これを「ドルコスト平均法」と言います。
長期分散投資でリスクを抑えよう
老後のためのお金は慎重に増やしたいですが、超低金利時代の今、預金だけではなかなか増えません。
そこで考えたいのが「投資」です。しかし投資というとリスクが怖い方もいらっしゃるでしょう。先ほどもお伝えしたように「積立投資」ならリスクを抑えながらコツコツふやすことができます。
なかでもおすすめなのが税制優遇のあるiDeCoとつみたてNISA。次回以降で詳しく解説していきましょう。
=iDeCoで自分年金=
第2回 iDeCoでお得に老後資金作り
第3回 簡単!iDeCoのはじめ方
第4回 もっと安心!iDeCoの活用方法
第5回 どっちが得?iDeCo vs つみたてNISA
第6回 老後2,000万円必要ってホント?
第7回 “今”の現状を知っておこう
第8回 70歳まで働くライフプランニング