
資産運用に興味のある方ならば、「確定拠出年金(401k)」という用語を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。しかし正しい言葉の意味やその内容については詳しくないという方もいるでしょう。今回は、「確定拠出年金(401k)」とは何かについて詳しくご説明していきたいと思います。
確定拠出年金(401k)って?
「401k」とはそもそも、アメリカ合衆国の内国歳入法(Internal Revenue Code)の条文番号401(k)からつけられた名称のことです。この条文は、従業員がお金を積み立てることに対して課税上の特典を与えるというものです。その背景には、個々人の自助努力による退職金準備を促進する狙いがあり、そのために税制優遇措置を講じているのが実情です。
この「401k」をモデルに、日本では「確定拠出年金」制度が作られました。そのため、確定拠出年金は「日本版401k」と呼ばれることもあります。すでにあるアメリカの制度を参考にしていることからも明らかなように、従来の公的年金にプラスするかたちで、自分自身で将来の年金を積み立てていくことに主眼が置かれています。
従来の年金は「確定給付年金」と表現されているのに対し、アメリカの401kをベースにした制度は「確定拠出年金」と表現されています。違いは後ほど解説いたしますが、最近は401kという言葉を耳にすることは少なくなり、むしろ確定拠出年金、または個人型確定拠出年金制度である「iDeCo」を知っている方の方が多いかもしれません。
日本の年金制度はどうなっている?
確定拠出年金は、公的年金に上乗せする個人年金です。そこで、改めて日本の公的年金制度の仕組みについて確認しておきましょう。
日本の公的年金制度は、今働いている現役世代が支払っている保険料を、給付世代(高齢者など)に給付する「賦課方式」を採用しています。その原資には、基本となる保険料収入に加えて、年金積立金や税金も含まれます。
日本は国民皆年金を基本としているため、20歳以上のすべての人は「国民年金」に加入することになります。それに加えて、会社員や公務員の人は、「厚生年金」にも加入します。このような仕組みから、日本の年金制度は「2階建て」と呼ばれています。
被保険者の種類で分けると、国民年金のみに加入している自営業者や大学生などは「第1号被保険者」、厚生年金に加入する会社員や公務員などは「第2号被保険者」、第2号被保険者に扶養されている主婦や主夫は「第3号被保険者」になります。
これら公的年金に加えて、企業が社員のために年金を積み立てる「企業年金(退職年金)」などや個人で加入する確定拠出年金があります。
確定拠出年金ってどんな制度?
「確定拠出年金」の内容を詳しく見ていきましょう。
確定拠出年金は、毎月積み立てたお金(掛金)を退職時まで運用し、老後にその資金を受け取る制度です。公的年金と異なり、個人が投資信託などで資産運用できるのが特徴で、運用次第で資産を大きく作ることができます。
確定拠出年金は「企業型」と「個人型」に分かれています。
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が掛金を拠出し、個人で運用する制度です。企業型DC制度を導入している企業の会社員が加入します。
一方、個人型確定拠出年金(iDeCo(イデコ))は、個人で掛金を拠出して、個人で運用する制度です。会社員だけでなく、自営業者、公務員、専業主婦(夫)なども加入できるのが特徴です。ただし、加入者によって掛金の上限は異なります。
確定給付企業年金との違いについても確認しておきましょう。
確定給付企業年金があらかじめ「給付額」を決めているのに対し、確定拠出年金は「拠出額(掛金)」のみが決まっています。そのため、確定給付企業年金では決められた額が加入者に支払われますが、確定拠出年金は将来いくらの給付額になるかわかりません。確定拠出年金の給付額は、運用実績によって変動するからです。
運用面にも違いがあります。確定給付企業年金では、年金資産の運用を企業が一括して行います。実際の運用に関しては、契約先の生命保険会社や信託銀行に委託することになりますが、運用によって生じるリスクは企業が負います。決められた給付額に不足が発生した場合は、その分を企業が補填します。
一方確定拠出年金は、年金資産の運用を個人で行ないます。具体的には、運営管理機関が提示した金融商品の中から、加入者個人が選択します。そのため、運用リスクは、個人が負うことになります。運用がうまくいけば給付額が増えますが、運用状況によっては少なくなる可能性もあります。
確定拠出年金の3つのメリット
すでにご存じの方もいるかと思いますが、確定拠出年金は税制メリットが3つあります。
① 全額所得控除
確定拠出年金は、会社が拠出する掛金は全額損金に算入できます。加入者個人が拠出した掛金は全額所得控除の対象になります。
例えば、年収450万円(所得税率10%・住民税率10%)の会社員が毎月23,000円を積み立てた場合、年間の所得税と住民税が約55,200円も少なくなります。
つまり、積み立てた分は年金として受け取れるだけでなく、所得税や住民税の負担が減らせるのです。
② 運用益が非課税
上でも触れましたが、確定拠出年金は、定期預金だけではなく投資信託などでも運用することができます。
通常、資産運用をすると運用で得た利益に対し20%(2037年までは復興特別所得税が加算され20.315%)が課税されます。つまり利益を得てもその20%は少なくなってしまいます。
しかし、確定拠出年金の運用益は全額非課税なのです。
20%分の税金がかかることがなく、運用益をそのまま運用することができるので、資産を大きくするのに効果があります。
③ 受取時も税負担が軽減
確定拠出年金の受け取り方には、「年金で分割」「一時金で一括」「年金と一時金の併用」の3パターンがあり、それぞれ「公的年金等控除」「退職所得控除」の対象になります。
勤務先からもらう退職金の金額などで、受けられる控除額には差が出ます。しかし、確定拠出年金は受け取り方が3通りあるので、工夫次第でさらに税負担の軽減ができるのです。
確定拠出年金にデメリットはある?
確定拠出年金には、デメリットもあります。まず、確定拠出年金はその名のとおり「年金」制度なので、原則60歳まで資産を引き出しできません。また、運用実績に応じて給付される金額が変わるため、柔軟に活用できる預貯金などと併用しつつ、計画的に将来の年金を作っていく必要があります。
また、確定拠出年金では手数料を負担いただくことがあります。例えば、iDeCoに新規で加入したり、企業型DCに加入していた人が退職などでiDeCoに移行したりする場合は、国民年金基金連合会に手数料(2,829円)を支払わなければなりません。「口座管理手数料」や「事務手数料」については、年間2,000円以上の費用がかかることを覚えておきましょう。なお各手数料は、金融機関によって異なります。
確定拠出年金はメリットが多い画期的な制度
このように一部デメリットもありますが、それを考慮しても確定拠出年金の税制メリットは大きな魅力であり、将来の資産形成を考えている方におススメです。勤務先に企業型確定拠出年金がある会社員の方は企業型へ、それ以外の方は、個人型確定拠出年金(iDeCo)への加入を検討されてはいかがでしょうか。
※当記事は2016年9月時点の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
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