一生お金に困らない人生を送るために何が必要なのか、老後のために本当に必要なことをファイナンシャルプランナーの井戸美枝が「iDeCoで自分年金」として全8回連載でお届けします。
講師:井戸美枝
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、社会保険労務士。経済エッセイスト。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。確定拠出年金の運用に関する専門委員会委員。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題について解説している。
第7回 “今”の現状を知っておこう
老後がはじまるのは20年、30年先のことかもしれませんが、無理なく老後資金を貯めていくには年間の家計収支を把握し、自分が普段どのくらいのお金を使っているかを知ることが大切です。
年間の家計収支を把握する4つのステップ
年間の家計収支を把握するのに必要なことは次の4ステップです。
それぞれ詳しく見てみましょう。
1. 1年間の手取り額を把握する
手取り額は給料の支給額(額面)から社会保険料や税金を差し引いた金額のことです。
額面ではなく手取り額というのが大事です。
上の式のように、平均手取り月収を12倍し、夏・冬のボーナス手取り額を足しあわせることで、1年間の手取り額が算出できます。
2.1年間の支出を把握する
1年間の支出を知るためには住居費、教育費などざっくり6項目に区分し、その内訳を下のような表にまとめてみましょう。支出は細くしすぎないのがポイントです。
数字を整理すると自分のお金の使い方の傾向が見え、無駄使いに気づきやすくなります。
また、食費や光熱費など毎月必ずかかる費用である基本生活費は一定に抑えることが、支出を安定させるポイントになります。
3.1年間の積立ている額を把握する
収入と支出を正確に把握できたら、次はいくら積立ているかを正確に把握します。
上記のように、1ヶ月の預金・投資額を12倍し、ボーナス時の預金・投資額を足しあわせることで算出できます。
4.1〜3を元に年間収支を出す
年間の手取り額・年間支出額・年間の積立額の3つが把握できたら、次は年間収支を求めましょう。
上の式のように、まず年間支出と年間積立額を足して、年間総支出を算出し、次に年間手取り額から年間総支出を引くと年間収支になります。
プラスなら積立額を増やせる余裕があり、マイナスなら貯蓄を切り崩している可能性があるので要注意です。
最後に…貯蓄率を出す!
最後にぜひやっておきたいのが貯蓄率を出すこと。
貯蓄率とは手取り額のうち、どのくらいの割合を貯蓄に回せているかを示したもので、収入が適切な割合で使われているかをはかる重要な指標です。
上のように、年間積立額と年間収支を足して年間手取り額で割り、100を掛けると算出できます。
理想的な収支や目標の貯蓄率は?
あくまでも参考にはなりますが、ライフスタイル別の理想と思われる貯蓄率をみていきましょう。
シングルで一人暮らしの場合は15%
※手取り20万円として計算
シングルで一人暮らしの場合は基本生活費や家賃の割合が高くなり、なかなかお金をためにくいでしょう。家賃などの住居費は手取り収入の30%以内に収めることが大切です。
さしあたり、1年分の生活費を目標に手取り収入の15%以上の貯蓄率をキープしましょう。
シングルで親元暮らしの場合は37%
※手取り20万円として計算
シングルで親元暮らしだと生活費や家賃が抑えられるため、浪費しがちになります。経済的な余裕を生かして、貯蓄率は37%を目安にしましょう。
ただ、親元暮らしが長くなると、場合によっては親の介護や実家の修繕費用を担う可能性もあります。
ライフスタイルの変化に対応できるように、備えましょう。
夫婦二人暮らしの場合は22%
※世帯手取り50万円で計算
共働きの夫婦で子どもがいなければ、経済的にも余裕があって貯蓄もしやすいはず、と思いがちですが、実はお互いに貯蓄ができていないというパターンもあります。
まずは早い段階で毎月の収支や貯蓄額を情報開示して世帯手取りの22%の貯蓄率をキープしましょう。
夫婦どちらかの収入だけで暮らす家計にできれば様々なリスクに対応できます。
共働き・子どもありの場合は8~17%
※世帯手取り50万円で計算
子どもがいる夫婦の場合、子ども一人当たり400万円ほどの教育費を準備する必要があるため、子どもの就学前は貯蓄率17%をキープしましょう。
塾代など、教育費がかさむ子どもの就学中は8~10%を目標にすると良いでしょう。
教育費に掛け過ぎて貯蓄率を下げると自分たちの老後に困ることもあるので注意が必要です。
年間の家計収支を把握しましょう。
無理なく老後資金を貯めるためにもご紹介した4つのステップで年間の家計収支を把握することが大切です。
また、理想的な収支や目標とすべき貯蓄率は、家族構成やライフスタイル、年収によって異なります。自分にとって適切な家計バランスを把握することから始めてみましょう
=iDeCoで自分年金=
第1回 お金に困らない!老後資金を作る5つの方法
第2回 iDeCoでお得に老後資金作り
第3回 簡単!iDeCoのはじめ方
第4回 もっと安心!iDeCoの活用方法
第5回 どっちが得?iDeCo vs つみたてNISA
第6回 老後2,000万円必要ってホント?
第8回 70歳まで働くライフプランニング