
将来の公的年金不安が叫ばれている現在、老後のことは定年直前ではなく、早い段階から考えておきたいものだ。共働きが当たり前となっている現在、老後資金のことを夫婦で協力して考えていく必要がある。今回は、具体的に老後にどれくらいの資金が必要なのか、夫婦で何を話し合えばいいのか、またどのように老後資産を形成すればいいのかを紹介する。
65歳までに3,000万円を目標にする!?
日本では少子高齢化が進み、将来自分たちが老後を迎える頃には公的年金は出ないのではないかという声も聞かれる。しかし、今の年金額より下がることはあれど、公的年金制度がいきなり消滅するとは考えづらい。公的年金制度がなくなることを心配するよりも、公的年金の金額が下がった場合でも自立した老後を送れるよう準備しておくほうが重要だろう。
厚生労働省が2016年に行った「年金制度基礎調査」によると、現在厚生年金を受け取っている人の平均年金額は151万2,000円(男性195万3,000円、女性115万5,000円)である。夫婦共働きの場合、月額にすると25万円程度になる。
将来の年金額が、今より7万円減って18万円になった場合を考えてみよう。
夫婦二人での老後の生活費を見積もるのは難しいが、18万円にあと12万円あれば、特に不自由なく暮らせるのではないだろうか? この場合、65歳から84歳(日本人男女の平均寿命)までで必要になる額は、10万円 × 12ヵ月 × 19年 で2,736万円となる。娯楽や予備費などを合わせても3,000万円程度を準備できたら、ひとまず目標は達成できるのではないだろうか。
夫婦で話し合うべき項目
もちろん、月の生活費30万円というのは一つの目安であり、この額は家庭ごとに異なってくるだろう。老後の生活について大切なことは、あらかじめ夫婦で話し合っておきたい。
まず話し合っておきたいのは、「住居」のことである。将来家を買うのか、賃貸のまま暮らすのかと言ったことはもちろんのこと、どちらかの親と同居するのか、老後はペットを飼うのかなど、つい見落としがちである。
また、「働き方」は将来の収入に直結するので、お互いの希望を聞いておこう。会社員になるのか、自営業をしたいのか、何歳まで働くつもりなのか、将来はパートをしたいか、などである。
晩婚化が進み、老後資金だけでなく「子どもに関する費用」を同時に貯めなければならない家庭も増えている。子どもは何人を希望するか、大学や大学院まで行かせるのか、私立か公立かなど、教育費だけでなく家族でしたいことも話し合ってみよう。
最後に、意外と大切なのが、お互いの「趣味」と「生活スタイル」である。これらは、他人からは理解されにくいが、本人にとっては必要なものが多い。生涯続ける趣味やスポーツは何か、友人とどれぐらいの頻度で会うか、食事はどういったものが希望か、お酒やタバコはどのぐらいの頻度で嗜みたいかなども、話し合っておきたい。
老後資金形成には確定拠出年金がおすすめ
住宅ローンや教育費などお金が必要なシーンは数多いが、老後資金は、初めは少額から貯めはじめ、住宅や子どもに必要なお金に目処がついた後で加速して準備する方が、目標も絞りやすいのではないだろうか。
老後資金の貯め方には、貯金や財形年金積立などもあるが、最初に考えたいのは確定拠出年金である。確定拠出年金には企業型と個人型があるが、誰でも加入できる個人型は「iDeCo」(イデコ)と呼ばれている。確定拠出年金のメリットは、まず何と言っても税制メリットが手厚いことである。掛金が全額所得控除の対象となるほか、老後の受取り時まで課税が繰延べられるうえ、運用益に対しても税金がかからない。
また、途中で転職などをしても、新しい会社に確定拠出年金制度があれば、自分の資産を持ち運ぶことができる。
もちろんデメリットもある。口座管理のためのコストはかかるし、投資信託の運用には信託報酬などの手数料がかかる。また、資産運用の結果によっては、将来の年金資産が減ってしまうのは、他の手段で投資する場合と同じである。
また、原則として60歳まで途中でお金を引き出すことができないので、若いうちにあまり確定拠出年金にお金を回しすぎると、いざという時に資金不足になる恐れがあることも覚えておこう。
老後資金は現役時代の延長上で考える
老後に必要になるお金と、夫婦で話し合っておきたい項目を紹介したが、これらの項目は、老後という目的がなくても、普段から話し合っておきたい項目ばかりである。老後資金はあくまで現役時代の延長上にあるので、普段からお互いのことを理解しつつ、自分たちに合った方法で老後資金を形成していくことを目標にしていただきたい。
※当記事は2018年5月時点の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
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