
個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)の特徴の一つは、自分で掛金を拠出し、自分で運用方法を決めることである。これまで資産運用や投資をあまりしてこなかった人にとっては、自分で運用方法を決めることはハードルが高く、元本確保型商品や、自分の知っている運用商品のみに偏る人も多い。本来、資産運用は保有する商品を分散することが望ましいが、どの運用商品にどのようなリスクがあるかを把握しなければ、分散が無意味になりかねない。そこで本コラムでは、それぞれの運用商品にどのようなリスクがあるかを紹介する。
目に見えやすい「価格変動リスク」
株式や投資信託などで資産運用をする場合、最も目に見えやすいのが「価格変動リスク」である。株や債券などの資産は、市場動向によって価格が変わるので、価格変動リスクは「マーケットリスク」とも呼ばれる。
価格変動リスクは、iDeCoの商品では、元本確保型商品以外のすべての運用商品が持つリスクであり、その要因も、景気や国内外の情勢変化、物価の動き、企業の新製品開発や不祥事など、多岐にわたる。
外国資産に見られるリスク
海外(外貨建て)の運用商品を取り扱う場合、最も気をつけなければならないのが「為替リスク(為替変動リスク)」である。これは、円と外国通貨との為替相場が変動することによって、外貨建て資産の価値が目減りすることだ。
例えば、1ドルが110円から100円に円高となった場合、米ドル建てで保有している100ドルの資産価値は、1万1,000円から1万円に下がることになる。逆に円安になれば、資産価値は上がる。
次に、特に新興国を対象にした運用商品を買うときに注意する必要があるのが、「信用リスク」「カントリーリスク」と言われるものだ。
信用リスクやカントリーリスクとは、株式や債券などの有価証券を発行している国や企業などが、経営不振や財政難などに陥った場合に配当や利息を払えなくなったり、その国や企業の有価証券の価格が大幅に下落してしまうことである。最悪の場合、発行体が倒産し、商品の価値がゼロになる場合もある。
もちろん、国内企業であっても多かれ少なかれ信用リスクはあるが、新興国、特に格付けの低い国や企業が発行する有価証券を含む投資信託などの購入を検討する場合、意識する必要があるリスクである。
安全に見える商品にもリスクはある
iDeCoには、積極的なリターンを狙う運用商品だけではなく、元本確保型商品や国内債券を中心とした投資信託など、比較的安全と思われている運用商品の取り扱いもあるが、実は、そういった運用商品にもリスクは存在する。
まず、元本確保型商品で気をつけなければならないのが、「インフレリスク」である。
景気が良くなれば世の中にある商品の値段は上がるが、これによりお金の実質的な価値が下がるリスクのことをインフレリスクと言う。
例えば、今後継続的に物価が上昇し、外食1回の値段が1,000円から2,000円に上がるとしよう。定期預金や保険商品など元本は確保されているが、利息がほとんどつかない商品ばかりで運用して10万円の資産が11万円に増えたとしても、外食できる回数は100回から55回に減ることになる。
このように、金額自体は減らないが相対的にお金の価値が下落し、資産が目減りする可能性があるのである。
株式と比較して、価格が安定していると言われる債券にもリスクは存在する。それが「金利リスク(金利変動リスク)」である。
日本は長い間金利が低い状態が続いているが、実は、債券の価格は金利によって変動する。今後金利が上がれば債券価格は下落し、金利が下がれば債券価格は上昇するという関係がある。
海外債券を含む投資信託を購入する場合はもちろん、日本においても金利が今後上昇する可能性は十分にあるので、この金利リスクは意識しておこう。
まとめ
すべての運用商品には、その特性に応じたリスクが存在する。国内株式型の投資信託であれば、マーケットリスク、信用リスクであり、外国債券型の投資信託であれば、為替リスク、信用リスク、金利リスクなどである。安全と思われている元本確保型商品においても、インフレリスクが存在する。大切なのは、どの運用商品がどういった種類のリスクを持っているのかを把握し、一つのリスクで資産が大きく減らないよう、分散して保有することである。
もし現在すでに資産運用を始めているのなら、どの資産がどのリスクに弱いか、確認してみてはいかがだろうか?
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