
老後資金の準備のために個人型確定拠出年金(iDeCo(イデコ))を利用しているが、資産運用で失敗するのを恐れるあまり、元本確保型商品ばかりを購入している方はいないだろうか。iDeCoは、同じ掛金を拠出し続けたとしても、運用次第で給付額に将来大きな差がつく制度である。本稿では、実際に発表されたデータを用いて、資産運用によってどのぐらい違いが出るのかを紹介する。
年平均3%で運用するとどのぐらい増えるか?
iDeCoで購入できる運用商品は、大きく分けて2種類ある。一つは、リターンは期待できないが元本割れする可能性も低い「元本確保型商品」、もう一つは、ある程度のリスクを覚悟の上でより高いリターンを狙う「投資信託」などである。
仮に、掛金の一部で毎月投資信託を購入し、年率3%で運用できたとする。この場合、10年後には約16.5%、20年後には約36.5%の利益が得られる計算になる。
上記について、掛金を毎月1万円ずつ拠出したと想定すると、10年後には120万円(=1万円×12ヵ月×10年)の元本が約139万円(=120万円×1.165)に、20年後には240万円(=1万円×12ヵ月×20年)の元本が約327万円(=240万円×1.365)になる。
分散投資の重要性
とはいえ、やみくもに投資信託に手を出したところで、年率3%の運用益が必ず稼げるわけではない。リスクを可能な限り低くしてより高いリターンを得るためには、分散投資を適切に行う必要がある。次の図は、2017年9月に金融庁が発表した、長期・積立・分散投資の効果の実績を示したものである(図1)。
日本国内の株式・債券に半分ずつ投資した場合(B)と、国内だけでなく先進国および新興国の株式・債券にも分散投資した場合(C)を比べると、価格が上下する動きは似ているものの、BよりもCの方が一貫してリターンを伸ばしていることがわかる。
また、全額定期預金で運用した場合(A)との比較にも注目したい。定期預金で運用するぶんには、元本を割り込むことはまずない。しかし、BやCのように投資信託を組み入れて分散投資した場合に比べると、いかに利益を得るチャンスを逃しているかがわかるだろう。
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長期投資の重要性
投資や資産運用においては、分散投資の他にももう一つ重要なことがある。それは、資産運用は長期で行うことにより元本割れのリスクを低減できるということである。
次の図は、同じく金融庁が平成2017年に発表した、国内外の株式・債券に積立・分散投資した場合の収益率の実績である(図2)。
投資信託の保有期間が5年の場合、運用がうまく行って高い利益を上げたケースがある一方、損失を出したケースもある。
これに対して、投資信託の保有期間が20年と長期にわたっている場合、保有期間が5年の場合に比べると、高いリターンを上げたケースは少ないものの、元本割れをしたケースはなくなっている。
もちろん、上記の図はいずれも過去の実績に過ぎないので、同じような資産配分や保有期間を真似したとしても、今後同じリターンが稼げることを保証するものではない。
ここで注目したいのは、保有期間が5年の場合よりも20年の場合の方が平均リターンのバラつきが小さいことだ。長期投資は、リターンのばらつきが小さくなるため、資産運用の見通しが立てやすくなることもメリットの一つである。
データが示す、分散投資と長期投資の有効性
iDeCoの資産運用では、同じ掛金を拠出していたとしても、運用次第で将来大きな差がつくことがある。適正なリターンを得るためには、「分散投資」と「長期投資」をし続けるといいかもしれない。iDeCoには、分散投資と長期積立投資を行うための仕組みが制度に組み込まれているので、効果的に老後資金の準備を進めていこう。
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